軽減税率でも農家の消費税は増えそう

たまには税金の話を。

主に農家と農協との取引についてです。

 

消費税が課税か免税か

消費税は売上高が少ない場合は納税が免除されます。

原則として、個人事業者の場合は前々年の、法人の場合は前々事業年度の消費税の対象となる売上高が1,000万円以下の場合がこの免除の条件です。

この場合の売上高ですが、原則的には純額ではなく総額で計算します。

例えば、モノを売る場合。

手数料が差し引かれて振り込まれる場合があります。

1,100円のモノを売って、手数料330円を差し引かれて770円振り込まれた。

この場合、総額の1,100円が売上高です。

純額の770円ではありません。

個人が前々年にこの取引を1万回繰り返したとします。

総額は1,100万円なのに対し、純額だと770万円。

消費税の課税か免税かの判定に使う売上高は1,100万円です。770万円ではありません。

したがって、前々年の売上高が1,000万円を超えることになり、消費税が課税になります。

  

特例がありました

しかし、この取引が委託販売の場合は特例がありました。

 

 委託販売等に係る委託者については、受託者が委託商品を譲渡等したことに伴い収受した又は収受すべき金額が委託者における資産の譲渡等の金額となるのであるが、その課税期間中に行った委託販売等の全てについて、当該資産の譲渡等の金額から当該受託者に支払う委託販売手数料を控除した残額を委託者における資産の譲渡等の金額としているときは、これを認める。

消費税法基本通達10-1-12 (1)

 

今までの消費税は税率8%ひとつでしたので、総額でも純額でも原則的な課税では納税額に影響が少なかった。

それゆえに認められていた方法だと思います。

 

上の例で言うと、純額の770万円を売上高とるすことを認めるということです。

そうすると前々年の売上高が1,000万円以下になりますね。

そうです。

特例を適用すると、消費税の納税が免除されます。

これは納税者にとって有利ですね。

 

また、1,000万円を超えていても、簡易課税の適用を受けている場合には納税者にとって有利な影響がありました。

簡易課税の対象となる売上高が純額になるので、納税額が少なくなっていました。

 

令和元年10月1日以降

今までは農家が農協に農産物を委託販売する場合にも、この特例の適用がありました。

ご存知の通り、令和元年10月1日から消費税の税率が10%となり、軽減税率の8%との複数税率が始まりました。

農家の生産する農作物は8%の対象となることが多いと思いますが、農協が差し引く手数料は10%の対象です。

そうすると、原則的な課税でも総額と純額で納税額に違いが出てきます。

なので、令和元年10月1日以降は純額の特例の適用がなくなりました。

 

 委託販売その他業務代行等(以下「委託販売等」という。)において、受託者が行う委託販売手数料等を対価とする役務の提供は、当該委託販売等に係る課税資産の譲渡が軽減税率の適用対象となる場合であっても、標準税率の適用対象となることに留意する。
 なお、当該委託販売等に係る課税資産の譲渡が軽減税率の適用対象となる場合には、適用税率ごとに区分して、委託者及び受託者の課税資産の譲渡等の対価の額及び課税仕入れに係る支払対価の額の計算を行うこととなるから、消費税法基本通達10-1-12(1)及び(2)なお書《委託販売等に係る手数料》による取扱いの適用はない。

消費税の軽減税率制度に関する取扱通達の制定について(法令解釈通達)16

 

農協の委託販売手数料が大体3割くらいとすると、売上高が700万円から900万円台だった農家には大きな影響があります。

今までは1,000万円未満で納税免除だったのに、計算方法が変わっただけで納税することになるかも、ということです。

農産物の多くが軽減税率の対象で良かった。

と思いきや、それ故に消費税の納税が生じるという結果も考えられます。

 

簡易課税も検討すべき

今までが優遇されていた、とも言えるかもしれません。

しかし、急に思わぬところから負担が増えるのも事実です。

影響が出そうな農家の方は早めに動くことをオススメします。

特に簡易課税の適用を受けることは、節税に有効な場合が多いのではないでしょうか。

農家は純額で計算できなくなった代わりに、それまでより有利な取り扱いとなったところもあります。

簡易課税は事前の届出が必要です。

また、原則的な課税よりも納税額が多くなることもありますのでご注意を。

税務署や税理士に確認のうえ、ご検討ください。

Follow me!

岡山グルメ

前の記事

香徳園⑲
岡山グルメ

次の記事

nature⑦